第11話
入院が決まったその日、彼女はそのまま精密検査を受けることとなり、俺はその間に彼女の着替えや日用品など一式を病室へと運んだ。
その間、桐也はてっきり彼女に付きっきりなのかと思いきや、俺の後ろをついてきては彼女に必要な物を教える様にあらゆる物を指さしては微笑んでいた。
付き合い始めて3ヶ月程度の俺には、彼女にどんな物が必要なのか、それが何処にしまってあるのか分からなかったのでこの時ばかりは助かった。
(こんなに詳しいってことは、こいつはやっぱり死んでからずっと秋さんの傍にいたのか?それとも……)
一緒に暮らしてた…………?
こんな時なのに、ふとそんなことが浮かんでしまう浅はかな自分に俺はため息がでた。
自分がこんなにも嫉妬深い人間だとは思っていなかった。
彼女と出会ってから初めて知る自分ばかりだ。
高校、大学とそれなりに今までも彼女はいたのに、今までの彼女の過去にここまで嫉妬など抱かなかった。
(俺めちゃくちゃかっこわる…)
深いため息をついて頭を冷やそうとベッドサイドに置いてある椅子から立ち上がると、丁度看護師さんと桐也に付き添われた彼女が病室へと入ってきた。
「あ、からちゃんお待たせ」
点滴スタンドをカラカラと押しながらニコニコとこちらへ向かってくる彼女。
いつもの見慣れただらしないスウェット姿ではなく、白い検査着姿の彼女に、俺はなんだか痛々しくて涙が出そうになった。
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