第10話
「んー…まあ自覚症状は無いみたいだけど、数字には出てるからねぇ…2週間だけでも良いから入院して欲しいんだけど」
「絶対いや!」
「嫌って…7年前もそうやって無理やり帰った後すぐ体調崩したでしょ、ダメだよ」
いざ診察が始まると、40代後半くらいの医者が採血の結果をコチラに渡しながらため息をついた。
「入院て…そんなに悪いんですか?」
深刻な顔をして身を乗り出す俺に、医者は「んー、良いか悪いかって言ったら悪いかな」と眉を下げる。
「7年前って…秋さんはどのくらい入院してたんですか?」
「3ヶ月くらいだよ」
「違うよ、結局半年強は居たでしょ」
俺が医者に投げかけた問に彼女が即答したが、すぐに医者に訂正される。
「半年……」
顔を青くする俺に、彼女は「大丈夫だよ、こんなことしょっちゅうだから」と笑う。
「しょっちゅうで片付けないで欲しいなあ、いつどうなるかなんて薬だけで保証出来るもんじゃないんだよ?」
「わかってますよ、ちゃんと薬も飲みます!休みも多めに貰うから!」
「もう…ここ2、3年調子が良いからって…私達医者が君の命の全ての責任は取れないんだよ?」
「分かってますよ、体調悪くなったらすぐに来ますから!」
そんなこんなで彼女と医者とのやりとりで入院の話が流れそうになった時、医者が何かを打ち込んでいたPCの画面が突然真っ暗になり、デスクの上の物が全て乱暴に床に落ちてしまった。
『!?』
その場にいた全員が訳が分からずただその場でフリーズした。
異様な状況にハッとし、俺は桐也の姿を探した。
すると彼は椅子に座る彼女の前にしゃがみこみ、彼女の手を握って縋るような瞳で彼女を見上げていた。
桐也の容姿を見て察した俺は、呆然とする医者に向かって口を開いた。
「先生、秋さんを2週間…お願いします」
「からちゃん!?なんで…」
「秋さんが心配だからだよ。とりあえず先生の言う通りしばらく安静にして、数値が回復したら退院させて貰おうよ。ね?」
俺の提案に彼女は尚も渋ったが、彼女の傍でたたずんでいる桐也は激しく頷いていた。
(こいつもしかして…)
俺の注意がつい桐也に向いている時、彼女も「分かった…」と小さく頷いた。
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