第4話
俺を見上げて微笑んだ彼女は、尚もベッドに座りこちらを傍観し続ける男をまるで見えていないかのように無視し、ベッドボードにおいてあった写真を手に取った。
そして「こっちに来て」と棒立ちになっている俺の手をひいてリビングへと歩き出した。
俺と彼女がリビングへと入ると、そこにはいつの間にかさっきまで彼女のベッドの上に置き去りにされていたはずの男が既にいて、ソファに座ってコチラを見つめていた。
「は?」
困惑する俺の一方で、彼女は男などまるで認識していない様な様子で、何も言わず、俺を男の座る隣に座らせた。
(なんだこの状況…)
俺がチラリと隣の男に視線をやると、男はニッコリと微笑んだ。
その瞬間、何故か俺の体に凄まじい悪寒が走り、ブルりと身震いした。
「大丈夫?」
そんな俺を、俺の膝に縋るような形で床に座っている彼女が見上げてくる。
小さな顔に大きな黒い瞳と丸みのある低い鼻のせいでか、彼女は実年齢よりかなり幼く見えてしまう。
こうして見上げられるとつい、彼女の方が年上であることを忘れ、頭を撫でてしまいたくなる。
「あのね、コレなんだけど…」
そう言って彼女が俺にベッドボードから持ってきた写真を手渡してきたので、俺はそのまま受け取ると、そこには今と余り変わらないが、無邪気に微笑む彼女と、今まさに俺の隣で謎に微笑んでいる男が写っていた。
「コレがどうしました?」
嫉妬でつい冷たくなる口調に、俺の膝の上に置かれた彼女の小さな手がビクリと一瞬震えたのが分かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます