第3話

「秋さんいる?」



バイトを終え、彼女の家へと帰ると、もう22時過ぎだというのにリビングは真っ暗だった。




夜行性の彼女がこの時間に活動していないのはかなり珍しい。




(具合いでも悪いのか?)




「秋さん…?」



心配になった俺は彼女の寝室をそっと覗き込んだ。




すると寝室に置かれたダブルベッドに横たわる彼女と、その彼女を後ろから包み込むようにして抱きしめている見知らぬ男がいた。



「誰だてめぇ!今すぐ離れろ!!」



彼女を愛おしげに見つめるその男を見た瞬間、俺は嫉妬が抑えきれず、彼女が眠っているにも関わらず大声で怒鳴り、布団を引き剥がした。




すると俺の声で目を覚ました彼女が大きな黒い瞳を見開いて「からちゃん…?どうしたの?」と小さい体をベッドから起こす。




「秋さん…!俺、分かってはいたんです、俺みたいな子供を貴方が本気で好きでないことくらい…!だから他の男と繋がってても仕方ないとは思ってました…だけど…でも…こんな風に見せ付けられるのは俺には耐えられない!」




体を震わせて叫ぶ俺を、彼女は今、どんな顔で見つめているのだろう。



彼女の反応が怖くて、俺は彼女も見知らぬ男も視界に入らないように床を見つめ、唇を噛んだ。




すると次の瞬間、下から彼女の小さな手が伸びてきて、俺の顔をおおった。



「私には、からちゃん以外に繋がってる男の人なんていないんだけど…なんだか勘違いさせちゃってたならごめんね」




「かん…違い?」



(じゃあ、その後ろの男はなんなんだよ!?)




「じゃあ…アイツはなんなんですか?」



我慢出来ず、俺は目に涙をためながら、その涙が瞳から零れないよう必死で堪えながら後ろのベッドを指さした。



そしてベッドを振り返った彼女は「ああ、話してなかったね」と納得した様に微笑んだ。

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