第4話
自分の前に立ちはだかる白い人物に驚き、橡は掠れた声を出した。
「もう分かったでしょう、ここから出ることは出来ません」
そう言って困惑する橡に手を伸ばしてきた白い人物の纏う真っ白なローブの隙間に、橡は黄金に光る鎌を見た。
その鎌を見た瞬間、橡は白い人物を麦畑へと押し倒し、その黄金の鎌を奪った。
「止めなさい、それはあなたには必要ありません」
橡に押し倒され、鎌を奪われた白い人物は、特に慌てるでもなく、ただ淡々と橡を諭す。
「じゃあ、お前はなんの為に持ってるんだ?こんな物で一体何を狩る気だった?最後の審判は神に委ねるんだろう?たとえこの中に毒麦が混ざっていたとしても、収穫までは狩るなと。収穫の時こそ審判の時じゃないのか?」
「この中に毒麦などありません、あるとすれば…」
「うるさい!」
白い人物が何かを言いかけたが、橡はそれを聞かず、奪った黄金の鎌で白い人物の喉をかき切った。
すると、白い人物の喉から吹き出した虹色の液体が橡と周辺の麦に飛び散り、次々と麦が黒く変色し、朽ちていく。
やがて汚染は橡の視界中、全ての麦に広がり、広大な黄金の麦畑は真っ黒に染まり、朽ちた。
そして気が付くと、自分の下にあったはずの白い人物の亡骸すらもなく、橡は呆然と立ち尽くした。
手には黄金の鎌を握り、虹色の液体を顔や手から払っていると、麦の枯れ果てた黒い大地からずるずると手が伸びてきて、橡を捕らえた。
「やめろっ!俺から離れろ!」
黄金の鎌を振り回す橡に、大地から伸びてきた複数の手が一度全て消失すると、次の瞬間橡の目の前に大きな純白の扉が現れた。
その扉は独りでに開き、どっしりと橡の前にたちはだかっている。
「はっ、出て行けって?元からそのつもりだ!!」
黄金の鎌を手にしたまま、橡は最後に悪態を付くと、そのまま振り返らずに扉の外へと出た。
そしてその後、橡が完全に扉から出たのを見計らった様に、純白の扉は消えうせ、黒く汚染された大地は一度まっさらな更地となった後、
すぐに黄金の芽が芽吹き、その数秒後には何事も無かったかのように再び煌々と輝く麦畑が完成したのだった。
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