第2話
「あの!すいません!人を探しているのですが!」
橡は人の姿を視界に捉え、それが人間であると認識した瞬間、まだ距離が離れているにも関わらず、大きな声をだしてその人物に呼びかけた。
白くぼんやりとしたその人物は、橡の声に一瞬動きを止め、ゆっくりとこちらに顔を向けた。
しかし、橡の方へと向けられたその人物の顔はマネキンのように鼻筋と輪郭はあるものの、人間の顔に本来あるべきパーツが全て無かった。
「どうしましたか?」
橡が自分の元へとやってくると、その白い人物は無いはずの口で平然と橡に問いかける。
「えっと、人を探しているんです!」
震える唇でそう返しながら、橡は自分が大して目の前の人物の姿に驚いていないことに内心驚いていた。
そして何故だかこののっぺらぼうの白い人物に既視感すら感じる。
「人を?誰です?」
「家族です!」
橡の答えに、白い人物は沈黙した。
そして次にぼんやりとした白い腕で湖の方向を指差す。
「あなたの家族はあそこです」
「湖?いいえ、あの中には居なかったんです!」
「誰が?」
「だから俺の家族がです!」
「だからそれは誰です」
「!?」
橡は白い人物に繰り返し同じ質問をされ、ここでようやく話が噛み合っていないことに気が付いた。
「あの湖の中にいるのは、皆、あなたの家族です。私があなたに聞いているのは、その中の"誰が"いないのかです」
「あ…えっと…、妹…!妹の水蓮です!」
橡は、何故か父と母の名前がどうしても思い出せず、鮮明に覚えていた妹の名前を叫んだ。
「水蓮さん?なるほど、で、あなたは誰ですか?」
「?……つ、る…ばみです?」
自分の名前すら何故か曖昧で、橡は不安から眉を寄せたが、白い人物は特に気にした風もなく、
次の瞬間、サラりと橡の妹がここに居ないことを告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます