第31話
車で運転をしながら懐かしい景色に目を細める秋人。
そして目的の家の前で車を停めると、立入禁止のテープがベタベタと張られた家の門の前に一人の男が家の中を覗き込むようにして立っていた。
その男は、ゴシックな執事服を身にまとい、ミディアムのグレイの髪に、琥珀色の瞳をしていた。
まるでおとぎ話の絵本から飛び出してきたかのような男の秀麗さに、秋人は一瞬目を瞬かせた。
そして男が、呆然と男を見つめて立ち尽くす秋人に気が付き、振り返って微笑んだ。
「?」
男の微笑みに、秋人は訳が分からずキョトンとしていると、男は秋人に軽く会釈をしながら微笑み、コツコツと質の良い革靴の音を鳴らしながら立ち去っていった。
(……誰だったんだ…)
秋人は全く見覚えのない秀麗な男の後ろ姿を見送りながら一瞬考えようとしたが、すぐに目的の家の中から激しい鳴き声が響いてきた。
「!?和田!?」
秋人は立入禁止のテープをぶちぶちと引きちぎり、体を支配する衝動のままに家の中へと入った。
「和田!?和田どこだ!?」
薄暗く、人の気配など無い家の中を土足で歩き回る秋人。
どうやら声はリビングの方から聞こえてくるようだと分かると、一直線にリビングへと駆け込む。
するとそこには、信じられないほど恐ろしい顔をした水色の物体が「ほのかぁ…!!ほのかぁ!!」と泣き喚いていた。
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