第29話
「ほ…の…か…どう、して…?」
私に体をズタズタに引き裂かれた姉は、ビリビリになった薄い水色の布から大量の綿を漏らしながら、刺繍された漆黒の瞳から涙を流していた。
「どうしてって……、お前が私の大切な人を奪ったからだ!!なんで!!どうして殺したの!!」
「アイツは…ほのかを殴った、絢を殺した、悪い奴だよ…?悪い奴からほのかを守るのが私の役目なのに…」
「ふざけんな!!絢のことは事故だったんだ!!あの人は……私にはあの人と絢しかいなかったのに!!」
「ほのか……でも…」
「黙れ!!返せよ!!返せ返せ返せ返せ返せ!!2人を返せよ!!」
私は姉の体から漏れ出た綿をぐしゃぐしゃにし、床に撒き散らした。
「ほのか…どうしちゃったの…?怖かったでしょ…?辛かったでしょ…?傷付いたでしょ…?お姉ちゃんが守ってあげるから…」
「要らない!!お前なんてもう要らないんだよ!!」
「え………………………………………………?」
「要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない要らない!!私はもう子供じゃない!!私は…、辛くてもあの人と居たかったの!!絢と…いたかったのに…!!どうして…どうしたら…取り戻せる…?」
「ほのか…ダメ、」
錯乱する私に、姉は床にバラバラになりながら私の方を見た。
そして、その漆黒の瞳に何を見たのか、急に半分に引き裂かれた顔だけでビュンッと飛び出して来ると、大きな口で私の首にガブリと噛み付いた。
「え…?」
私が最後に見たのは、いつの間にか私の傍に現れた執事服を着て、薄い笑みを浮かべるグレイの髪の男と、私の間に割って飛び込んでくる姉だった。
姉は、刺繍された漆黒の瞳から大量の涙を流しながら、必死の形相で私の元へと飛び込んできていた。
そして次に聞いたのは、ブチッという姉の鋭い牙が私の皮膚を突き破る音と、「ずっとあいしてるよ」という姉の切ない声だった。
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