第27話
しかし、そんな楽しい毎日も長くは続かなかった。
結婚前、姉が私に言った様に、夫は不倫をしていた。
傷付いた私は取り乱し、絢の目の前で夫に喚き散らした。
すると夫は私の頬を拳で殴ってきたのだ。
その威力で壁に叩き付けられ、床に体を強く打ち付けた私は、一瞬何が起こったのか理解出来なかった。
しかし、すぐに父に殴られた時のことを思い出した。
すっかり忘れていた、
殴られたら痛いんだ、
床も、壁も、こんなにも固いんだ。
夫は私に対して何か怒鳴りながら近ずいてくると、私の髪を掴みあげ、左右の頬を交互に殴りつけてきた。
絢の鳴き声が家中に響き渡る。
ごめんね、ごめんね絢…。
「あぁ〜〜!!おねぇちゃあぁ〜ん!!たすけてぇ!おかあさんがぁ〜!!」
泣き叫ぶ絢に、夫は「うるせえ!」と怒鳴りつける。
夫の鬼のような形相に、絢は更に驚き、ビクリと体を震わせたかと思うと、更に大きな声を上げて泣き始めた。
そんな絢に夫は舌打ちをしながら近付き、まだ幼い絢の頭を片手で床に叩き付けた。
「うるせえって言ってんだろ!!」
「絢っっ!!」
ゴンッと鈍い音が響き、人形の様に床にパタリと倒れ混んだ絢は、それきり動かなくなった。
頭を打った痛みで泣く訳でも、恐怖で声が出ないわけでもない。
倒れた絢は、大きな目を見開いたまま、ショック死してしまったのだ。
「絢っ!!絢!!」
母親の本能なのか、私はふらつきながらも絢へと駆け寄り、夫を突き飛ばして動かなくなった絢を抱き上げた。
頭からは血が流れ、全身からは力が抜け、だらんとしなだれている。
「お、俺のせいじゃないからな…!ソイツが、ソイツがうるせえから悪いんだ!」
「救急車…」
しどろもどろになる夫を他所に、私はスマホを取り出した。
しかし、その手からすぐにスマホは夫へと奪われてしまう。
「俺がかける、お前は余計なことするな。事情も俺が医者に説明する、お前は余計なこと言わず、俺の言う通りにしろ」
そう言って私を睨み付けてくる夫に、私は虚ろな目で頷いた。
(どうしてこんなことに……)
私がそう思い、涙を流した時、私の目の前でスマホを握っていた夫の腕がボトリと切断された。
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