第26話
大学を卒業した私は、IT系の会社に就職が決まり、4年ほど務めた後に職場で出会った男性と結婚した。
結婚が決まり、会社を退職する頃には私のお腹には赤ちゃんがいた。
私が妊娠したことに対して姉はとても喜んでくれたが、私が結婚することに対しては最後まで反対した。
「アイツは絶対にほのかを裏切る!」
姉は普段まん丸の目を二等辺三角形のように釣り上げ、延々と私の夫となる男性を否定し続けた。
しかし、私は姉に否定されればされる程、"そんなことない"と頑なになり、結局姉の賛同を得ぬまま、結婚した。
住み慣れた姉と私の家に、夫と赤ちゃんが増え、私はとても幸せだった。
これからこの家で「本当の家族」としての生活を作っていこうと胸がたかなった。
姉は、夫が仕事で居ない日中は私と2人で赤ちゃんのお世話をしてくれた。
赤ちゃんがグズりだすと、ガラガラと鳴るおもちゃを短い前足で持ち、ボリュームのある体をぷりぷりと揺らしながらあやす。
「はい、はい、あやちゃんこっちだよ〜」
娘の絢が歩くようになると、姉は転んでも良いように、自分がすぐ側に寄り添って歩き、体勢を崩した時には自分が下敷きになって絢を受け止めた。
絢が言葉を話すようになると、絢は一番最初に「おねちゃん」と歯のない口で微笑んだ。
姉は飛んで喜び、時間が許す限り、絢に言葉を覚えさせようと話しかけ続けていた。
そして絢が2歳になった年、絢は自分よりも大きな姉を抱きながらこんなことを言い出した。
「お母さん、どうしてお姉ちゃんはお父さんが帰ってくるとお話してくれないの?」
「ん〜…お姉ちゃんに直接聞いてみたら?」
困った私は、姉本人に答えて欲しくて、絢にそう言いながら、絢に抱かれ変形した姉に視線を送った。
しかし、姉は私と目を合わせないようにしているらしく、ただのぬいぐるみの様にフリーズしている。
(コイツめ…ぬいぐるみのフリしてるな…)
とぼける姉がなんだか可愛くて、私は微笑みながら絢の前にしゃがみこんだ。
「お姉ちゃんとお話出来るのは、お母さんと絢だけなんだよ」
「そうなの?」
「そうなの。お父さんには内緒。だから絢もお父さんがいる時はお姉ちゃんに話しかけたらバレちゃうから気を付けてね?」
「わかった!ないしょだね!」
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