第24話
翌日、私は自室で一人目を覚ました。
昨日のことはもしかしたら夢で、父は生きているんじゃないかと思うと、階段を降りる足がすくんだ。
そして恐る恐るリビングを覗くが、父の姿は無い。
昨日の出来事が現実なら、父の遺体があるはずだ。
しかし、リビングには父の遺体どころか、あんなに激しく飛び散ったはずの血の跡までもが全く残っていなかった。
やっぱり夢だったのか…と私が床にへたりこんだ時、後ろから姉の声がした。
「ほのか、おはよう」
「あ…お姉ちゃん…おはよう」
「今日は秋人くんに会いに行かなくて良いの?」
「え?」
「秋人くん、さっき来てたよ」
「え……なんで…部活じゃ…」
「部活の前にほのかに会いに来たんじゃない?まあ、チャイム鳴らしてくれなかったからお姉ちゃんも声かけなかったけど」
全くいつも通りの姉の様子に、私は戸惑いながらも、姉に問いた。
「お、お姉ちゃん!お父さんは…?」
姉は、短い前足で布巾を持ち、テーブルを拭いていたが、私の声にピタリと動きを止めた。
そして、ぶにゅりとまん丸の顔をこちらに向け、ただ一言発した。
「いないよ」
「いない…って…仕事?」
「違う」
「じゃあ、出張?」
「違う」
「え…じゃあ…」
「死んだ」
「死んだ!?本当に!?」
驚く私に、姉は体を揺らしながら笑った。
「うん、昨日私が喰い殺したじゃん。忘れちゃったの?」
「あ……いや…夢かと思って…」
「そっか。現実だよ、ほのか。もうほのかは自由だよ、あんな奴に怯えて息を殺して過ごす必要なんてないし、やりたいこともやりたいだけやれば良いよ」
「で、でもお金とか…お父さんいなかったらどうしよう…」
私が俯くと、姉は「大丈夫、お姉ちゃんが守るよ」と漆黒の瞳を細めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます