第19話

それから私は結局、夏休みの間ほとんど毎日図書館で秋人と待ち合わせをし、宿題をしたり近くのコーヒーショップでコーヒーを飲んだりした。



しかし流石に毎日コーヒー代を払って貰っているのがいたたまれなくなった私は、午前中で練習が終わる日は弁当を作って持っていくようになった。



そしてその日も私は練習終わりの秋人を中庭の隅っこで待っていた。



「和田!ごめん、待った?」



「いや、どーせ暇だし大丈夫。はい、お弁当」



「マジありがとう!俺、和田の手料理大好き!」



言葉だけでなく、本当に嬉しそうに微笑む秋人につられ、私まで頬が緩む。



秋人が弁当を食べ終わると、2人で図書館へと移動し、2~3時間黙々と勉強をする。



そして秋人の集中力が切れたところで、いつもの様に駅近のコーヒーショップへと向かう。



「和田は先に席取ってて。俺、買ってくるから」



「ありがとう、でも今日はケーキとか要らないからね」



私の言葉に秋人は「はいよ」と返事をしつつ、イタズラっぽく微笑む。



秋人がこんな風に笑う時、絶対に言ったこととは反対のことをする。



私は向かいがソファ席になっている隅っこの席を選び、荷物を足元に置いてちょこんと座って秋人を待った。



こんな時、私はスマホを持っていないので、完全に手持ち無沙汰である。



「和田はいつも隅っこ選ぶなー」



ふと秋人の声に顔を上げると、案の定、私の分のフラペチーノとケーキののったトレーを持った秋人がいた。

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