第18話

どうして秋人はこんなに怒っているのか理解が追いつかなかった。



私が殴られていようと、痛いのは私だ。



怖いのも私だ。



秋人には何も迷惑をかけていない。



「やめて……怒らないで……」



そう言った私の顔が秋人にはどう見えたのだろう、彼は突然ハッと私から手を離し、なにか痛みから耐えるような表情をして「ごめん…」と言って離れていく。



「怖がらせる気はなかった…俺、和田が心配で…。なんかお前、いつの間にかフッと消えて学校来なくなるじゃないかって…思って…」



「…………どうしてそこまで?」



「どうしてって…心配ぐらいするだろ、友達なんだから」



「友達………ごめん、私…お姉ちゃんにしか心配されたことないから分かんなかった」



私がそう言って俯くと、秋人はすぐに私の手を取った。



「じゃあ俺がこれから心配してやる、友達として。だから遠ざけようとすんな。和田が本当に助けて欲しい時、気付けなくなる」



真剣な秋人の目を私は思わず見つめ返した。



姉の言う、"私を支えてくれる人"というのは友達こういう人なのだろうか。



「……わかった」



私がぎこちなく頷くと、秋人は少しほっとした顔になり、スマホの画面を見せてきた。



「……なに?」



「なにって…連絡先」



「………私スマホ持ってない…」



「は!?」



私の返答に秋人は目を向いたが、すぐに咳払いで誤魔化し、「じゃあ、明日の午後図書館に来いよ!お前は文化祭の実行委員なんだからな!」と言って文化祭の企画書を押し付けられた。



文化祭の実行委員なのは秋人である。



「え、私関係ない…」



そう言いかけて、秋人が私を連れ出そうとしていることに気が付き、押し付けられた企画書を握り、秋人に向かって頷いた。



「分かった」



「決まりな、じゃあ明日!」



頷いた私を見るなり、秋人はニカッと微笑み、手を振りながら体育館へと走って行った。

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