第15話

私の訴えを姉は悲しげに丸々とした体をすぼめながら聞いていた。



簡素な顔の作りなのに、何故か姉が悲しんでいることがハッキリと感じ取れた。



「ごめんね…ほのか…。でもお姉ちゃん、もう人間じゃないんだ。だからほのかが私を守る必要はないんだよ?」




「で、でも!お父さんがまた捨てちゃったり、燃やしちゃったりしたらどうするの!?」



「燃えないよ」



「嘘だ!」



「本当だよ、私は燃えない。だってほのかとずっと一緒って約束したから。捨てられても帰ってくるよ」



「そんな…信じられない…!そんな都合良いこと起きやしないよ!」



「でも私はココに居るよ、ほのかの居るこの家に戻って来た。奇跡でもなんでもない、お姉ちゃんはお姉ちゃんの意思で戻って来たんだよ」



「私は……お姉ちゃんだけで良い…2人きりで…」



泣きじゃくる私に、姉は自分の体をピッタリと私の体にくっつけ、丸々とした顔で頬ずりしてきた。



「ほのか…ほのかは逃げても良いんだよ、お父さん《アイツ》はお姉ちゃんに任せて。この家から出ていいんだよ」



「でもそしたら…お姉ちゃんは…?」



「お姉ちゃんは後から必ずほのかの所に行くから。大丈夫、だからほのか…助けて貰おう?もう耐える必要なんてないんだよ、ほのかが傷付けられる正当な理由なんてないんだから」



「お姉ちゃんは…どうするの?お父さんは任せてってどういうこと?」



私がしゃくりあげながら涙を拭きながら姉にそう問うたが、姉は無表情で「大丈夫だから」としか答えなかった。



そして泣き疲れた私に寄り添い、そのふっくらとしたお腹に私の顔を誘導して、短い前足でヨシヨシと頭を撫で始めた。



幼い頃、よく姉の膝に縋って眠っていた時のように、私はその心地良さにそのまま眠りへと落ちていった。

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