第9話
「なぁ、和田ってもしかして虐待されてる?」
「えっ、……は?」
私が高校生になった春、クラスメイトの男子が唐突に声を掛けてきた。
確かに私の体には制服でも隠しきれない程の痣があり、日によっては顔にまで青紫色の痣があった。
誰が見たってただ事ではないことは分かるだろう。
しかし、だからと言って今までこんなにも率直に踏み込んできた人は居なかった為、私は思わず面食らってしまった。
「ずっと痣消えないじゃん」
「………いや…」
「なんで逃げないんだよ」
「………………」
「和田」
「私は大丈夫、別に毎日じゃないし」
「毎日じゃない?いや、親が子供を殴るってこと自体が異常なんだって。お前、全然大丈夫なんかじゃない」
「……てゆーか、殴られてるなんて私一言も言ってないし」
「言わなくてもお前見てりゃ分かるよ。お前、親父と同年代の先生にもビビってるだろ?足音とか、すげー敏感じゃん」
「は?つかなんでそんなに見てるわけ?キモいんだけど」
男子生徒の言葉に動揺を隠しきれなくなった私は、反射的にその場から走り去った。
あの男子生徒によって、姉が死んでから自分の中に奥深く、そして固い鍵を掛けて封じてきた脆く、弱い幼いあの日の自分がゆり起こされてしまうような気がした。
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