第7話
そしてあっという間に49日を迎え、姉の遺骨をお墓へと納骨した日の夜、親戚を家に招いての食事会で酔い潰れた父をリビングに放置したまま、
私は家中の片付けを済ませ、2階の自室へと戻った。
父が寝てしまったタイミングでシャワーを使うことは出来ない。
「もう寝よ…」
鉛のように重い体で自室のドアを開くと、ガランとした部屋の中心から真っ直ぐにこちらを見つめる水色の塊があった。
「え……」
「おかえり」
「!?」
水色の物体は顔の中心にある鼻をふむふむと動かし、鼻が詰まったような、くぐもった声を出す。
「おかえり、ほのか」
「お姉ちゃん…?」
部屋の中心にいる水色の塊は、黒い糸で刺繍されたまん丸の目でじっとこちらを見つめてくる。
この水色の塊は、姉が一番気に入っていたネコのぬいぐるみだ。
50センチもある一頭身のこのネコのぬいぐるみは、父によって処分されてしまったはずだった。
「お姉ちゃんなの…?」
カタカタと震える手で綿のたっぷり詰まった柔らかなぬいぐるみの体を抱き締め、その布に染み付いた懐かしい姉の香りを身体中いっぱいに吸い込む。
「ずっといっしょっていったから」
力いっぱい姉を抱き締める私の耳元で姉はたどたどしい口調で囁いた。
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