第5話
依然として晴れた空と、それを半分以上飲み込んだ闇が空にせめぎ合っている空を眺めながら、青年の隣を歩いていると、
『空ってなんで青いんだろうね』と青年が子供のようなことを言い出した。
『海も、呑まれちゃってる部分は真っ黒だけど、まだのところは青く見える。空と海ってなんで同じ色なんだろう』
楽しそうにそう話す青年に、私は思わず笑い声を上げた。
「海の色は、空の色が反射して青く見えるんだよ」
『そうなの?じゃあ、空が青じゃなかったら海も青く見えないんだ?』
「うん、空が曇ってる時は空が灰色になるから、海も冷たい灰色に見えるよ。逆によく晴れた夕暮れの時は、強いオレンジ色に見えるよ」
『オレンジ色の海はどんな感じなの?灰色の海は冷たいんでしょう?』
興味津々といった風に顔を近付けてくる青年に、私は少し驚きながら「燃えてるみたいで綺麗だよ」と微笑んだ。
『オレンジ色かぁ、見てみたかったな』
「また見に来ようか」
『え?』
「あっ」
無意識に自分が放った言葉の意味を振り返り、私は思わず青年の顔を見上げる。
「また今度なんてないんだった、ごめん」
困ったように笑う私に、青年はそっと私の頬を撫でると『あるよ、君には。また僕の作った海を見に来てよ』と囁いた。
こんなに近くにいるのに、顔の作りも表情も全くはっきりと分からない青年に、私の心臓がドクドクと早鐘を打った。
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