第2話
『あのー、すいませーん!』
「?」
久しぶりに他人の声を聞いた私は少し驚きながら声の方を振り返ると、すぐ後ろに人の顔があった。
「うわっ!びっくりした!」
声は確かに遠くから聞こえてきたはずなのに、発した人物がすぐ側にいたことに驚き、私は思わず飛び上がった。
『あ、ごめんなさい〜。ここに来て初めて人に会えたのでつい』
耳障りのいい、滑らかで落ち着いた声からしてどうやら相手は青年のようだったが、
その顔は何故かどの角度から見ても薄く陰っていて顔がハッキリと見えない。
青年の顔の詳細が気になって、私はまじまじと陰った青年の顔を見つめるが、見れば見るほど意識が朦朧としてくる気がして、結局諦めて青年から目を逸らした。
(もしかしたらこの人、消えかけてるのかも…)
「大丈夫ですよ、この辺にはもう私しかいないので」
『そうなんだ?…寂しいね』
何故か憐れむような青年の声に、私は首を傾げた。
「仕方ないですよ、世界が終わるんですから」
『君は寂しくないの?』
「あー…寂しくない訳じゃないです。でも、家族も友人もいつの間にか夢が覚めたかのようにパッといなくなっちゃったので、中々実感が持てないだけかも…」
『そう…君の言う通りかも。ごめんね』
「?なんで謝るんです?あなたも親しい人が消えてしまったから誰か生き残ってる人を探しに来たんじゃないんですか?」
顔を覗き込もうとする私に、青年は『いや、僕は…』と気まずそうに身をひく。
(まあ、覗き込んだところであなたの顔、見えないんですけど)
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