第8話
受験勉強を石田と共にやっていたおかげか、私は受験する学校のレベルを一つ上げ、無事に合格することができた。
高校に入学しても、私は相変わらずカスのお姫様抱っこで通学を強いられた。
高校生ともなればスタイリッシュに電車通学を想像していたのだが、結局私は毎日失神しながら登校しなければならないらしい。
「カスさあ…私を守りたいのは分かったんだけどさ、電車くらいは良いんじゃない?」
『だめ。何回目だったか…志帆は電車の事故で死んでる』
「マジかよ…え、何回目ってどゆこと?」
『転生の回数』
「私、合計何回生まれ変わってるの?」
『正確には分からない。けど、一緒に生きるのは今回で30回目』
「30回!?多過ぎない!?なんで!?」
『輪廻転生の仕組は俺にも分からない。だけど君達はその命を使って何かを探していることだけは分かる』
「カスにも分かんないことがあるんだね…てゆーか、私、今までカスと30回も会ってるのになんにも覚えてないんだけど」
『死んだら真っ白になるみたい。毎回君は俺のことを忘れる。だけど、君は必ず俺を見付けて育ててくれる』
「……なんかそれ次からプレッシャーだな…次に私がカスに気付けなかったらカスはどうなるの?」
『死ぬ。もう二度と君には会えない』
「そんな…!」
『はは、大丈夫。君はこの会話を必ず忘れる。俺に気付かなければそれはそれでいい』
「なんてこった…そんなの嫌だから絶対見つけるよ…」
私がそう言うと、私のワイシャツをアイロンしていたカスがソファーでふんぞり返っている私の方へと顔を向け「分かった」と短く言った。
その声はなんとなく、いつもより柔らかいような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます