第3話
「おわっ!ちょっと!」
『なにか?』
しれっとリビングに居座る白い謎の巨漢を私は全身を使ってキッチンで料理をしている母に見えないように隠すが、次の瞬間、その母から驚きの言葉が飛び出す。
「ちょっと志帆、なに遊んでるの。カス、お風呂掃除してきてくれる?」
『分かった』
「えぇ?」
母は当然のようにキッチンからこちらへと声を掛け、謎の白い巨漢も快く指示を受け入れ、スタスタとリビングから出て行く。
「え、お母さんアイツのこと知ってるの?」
「アイツ?」
「あの白いヤツだよ!」
「白いヤツ?カスのこと?知ってるもなにも、アンタが生まれた時から一緒じゃない」
「はあ!?いや、アイツさっき虫かごから…!」
首を傾げる母に真実を伝えようとすると、『ママ、スイッチを入れるのはいつもの時間で良いね?』と風呂掃除を終えた白い巨漢が戻ってきてしまった。
「いやいやいや!私のカスは幼虫だったんだって…!お前!一体誰だ!」
『カス』
つぶらな瞳をパチクリとしながら首を傾げる白い巨漢。
「いや、おかしいだろ!じゃあなんだ?あの一瞬で進化したってか?」
『した』
「え……」
『進化した。あのサイズじゃ志帆を守れない』
「え…どゆこと…」
混乱する私に、母は呆れたようにため息をつく。
「カスはアンタのシークレットサービスでしょ…なによ今更…アンタが今日まで無事に居られるのはカスのおかげなのよ?」
「シークレットサービス…?なぜ私にそんなものが…」
「まったくこの子は…このご時世、親2人だけで子供を育てられる訳ないでしょ?」
「そうなの…?」
「そうよ、お父さんとお母さんの代わりに学校に毎日送迎してくれてるのは誰?カスでしょ?」
「え、いや…私は自転車で…普通に…」
「はあ!?お母さんはそんなことさせたこと一度もないわよ!」
母のあまりの剣幕に私は驚き、言葉を飲み込んだ。
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