第5話

「ここか…」



そうして俺が影に導かれるまま、電車を降り、辿り着いたのは、影が俺に見せたイメージ通りの和風の屋敷だった。



制服のスラックスのポケットに入れられた石のような、宝石のような"ソレ"を一度確かめ、目を瞑る。



影から預かったこの石のような物は、触れては良いが直接見てはいけないらしい。



だがその石に触れていると、すぐ耳の後ろから影の声が聞こえてくる。



俺はその声を聞いて、影に誘導されるままに進むのだ。



そうすれば必ず上手くいく、


なんでって、そう影が言ったから。


そう、むしろ「そうしないといけない」んだ。



「行くか…」



俺が誰にも聞こえないほど小さな声で呟き、一歩足を進めたその時、後方から聞き覚えのある声が響いてきた。



「おーい、そんなトコにお前が何の用だよ?」


「!?」



よく通る声が俺の両耳を貫き、体中に焦りという衝撃が走る。



そして俺が恐る恐る振り返ると、そこには俺と同じ制服を着た2人の男子生徒がたっていた。



一人は、ややつり目な灰色の目を持ち、赤茶髪の癖のない髪をかきあげながら、その鋭い灰色の瞳で俺を見つめている。



そしてそのすぐ隣にいる、ふんわりと癖のあるくすんだ金髪で、ややたれ目の生徒は、そのおっとりとした灰色の瞳でジッとスラックスのポケットに突っ込んでいる俺の手を見つめていた。



この2人は学園内でも有名な双子だ。



なんでも学園長と遠い親戚だかなんだかで、海外の兄妹校から編入してきたらしい。



(名前なんだっけ、確か変なカタカナだった気が…)



「で、お前その家に何の用?」


「お前らに関係ないだろ」


つり目の生徒の方にぶっきらぼうに返すと、つり目の生徒は、声を上げて笑った。


その笑った口から一瞬、鋭い牙が見えた気がして、俺は一気に冷や汗をかいた。



「まあ、確かに関係ない。そんなトコに入って、お前がどうなったって、俺達は全く困らないし、興味も無い。別に止めに来た訳じゃねーから質問にだけ答えてくれるか?」



「?…なんだよ?」



「いや、お前、"鬼"相手に本当に"そんな物"で勝てると思ってんのか?」



「は?」


つり目の生徒に指を差され、ふと自分の右手を見ると、いつの間にか俺は大きな出刃包丁を握っていた。

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