第4話
『大丈夫だ、私の言う通りにすれば全て上手くいく。分かるな?お前は"アレ"に一矢報いてやりたいんだろう?だったらどうしてやりたい?』
「どうしてやりたい…?俺が?アイツを?」
この時俺が影の"アレ"という言葉を聞いて咄嗟に思い浮かべたのはコーチの顔だった。
確かに不満はあった、
そして見返してやりたいとも思っていたし、自分の頑張りを認めてくれず、強い言葉を浴びせてくるコーチに対して今日は終始イラついていた。
しかし、ただそれだけだった。
にも関わらず、影の言葉に誘発されるようにして、俺の腹の奥底からふつふつとドス黒く、熱い憎しみが湧き出し、それが頭に浮かぶコーチとすんなりと結びついてしまった。
だんだんと憎しみに表情を暗くしていく俺を見下ろし、影は楽しげに蠢きながら囁く。
『さあ、言ってごらん?お前は"アレ"をどうしてやりたい?』
「………見返してやりたい」
『そうだな?じゃあ今からその家に向かうんだ。そしてもう一つの"ソレ"を私のもとへ持って来なさい。邪魔な人間はそうだな…殺してしまえばいい』
「…殺す?」
『ああ、簡単だろう?人間の大半は既に考えることを止めた肉塊に過ぎない。動物と同じだ、一人や二人消えたところで、なんの不都合もない。大丈夫、誰もお前を責めたりしない、私が許そう』
「…………」
黙り込む俺に、影は更に続ける。
『それに、愛する妻と子を殺されたら"アレ"は絶望するだろうな?』
「!!」
嘲る様に笑い声を漏らしながらそう囁かれた瞬間、俺の心臓が一際大きく跳ねた。
「そうだ…そうしないと…」
今の今までバラバラだった事柄が、まるで一気に順番に並べ替えられ、筋が通ったような、スッキリとした感覚を覚え、
それが俺にとうとう決断させてしまったのだ。
「俺、行くよ」
俺が無表情にそう頷くと、影は嬉しそうにぐるりと俺の周りを一周し、『お前なら分かってくれると思ったよ』と言って狂気的に笑った。
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