二章

第18話

それはまだ恋が一族の中で生活していた頃で、牡丹と知り合って間も無い時だった。



牡丹はある日、恋が外から連れ帰ってきた人間に、大量の薬を与えている現場に遭遇した。



「おい!お前何やってんだ!」



暗い納屋の中で、人間は苦しそうに唸っていた。



「牡丹様、こんにちは」



「こんにちはじゃない!お前は一体何をしてるんだ!そんな状態の人間に、俺達一族の秘薬を飲ませたりしたら死んでしまうぞ!」



牡丹に激しい剣幕で怒鳴られた恋だったが、特に気にした風もなく、人間を更に強く縛り直し、牡丹に向かって無邪気に微笑んだ。



「牡丹様!僕は薊との約束を破りました、これでやっと彼女に会えますよ!」



まだ幼さの残る顔で、恋は狂気の笑みを浮かべていた。

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