第14話

私がぬいぐるみになってしまってから、少なからず一週間はたった。(推定)



未だに何故自分がぬいぐるみになってしまったのかは分からない。



しかしどうやら外の世界では何かが起きているらしく、アレから毎日のように牡丹さんが訪ねてくる。



(どうして毎日来るんだろう…寂しいのかな…)



牡丹は猫用の皿にのせられたピンク色のクッキーをガツガツと貪る朱殷をジッと観察していた。



「うんむうんむ…」


無意識に朱殷の口から出る謎の鳴き声を聞く度に牡丹は一度朱殷の顔を持ち上げ、口に詰まったクッキーの屑をティッシュで取り除く。



「んぁ、ありがとうございます」


「ああ」


(店でもそうだけど、牡丹さんてクールだなぁ)



朱殷は顔ごとチラリと牡丹の方へ向けると、目だけでこちらを見ていた牡丹と目が合ってしまったので、朱殷は慌てて猫用の皿に丸い顔を突っ込んだ。



「なぁ、お前さ…」


「む?」


「ずっと気になってたんだけど、お前は猫なの豚なの、どっちなの?」



「む?恐らく猫だと思いますけど…」


「へぇー、猫なんだ。それにしてもお前、初めてあった日よりだいぶデカくなってないか…?食い過ぎ?」



牡丹は丸い顔を全力で汚しながらクッキーを貪り続ける朱殷に疑いの視線を送る。



どうやら牡丹は朱殷がこのクッキー以外のものを食べていると思っているようだ。



「ああ…それはこの間…」



朱殷は一度猫用の皿から顔を上げると、クッキーまみれの顔で喋り始めた。

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