第13話

「んはぁ/////それって君も僕のことが好きだからだね!?あぁ〜…/////気が付かなかったぁ…君が僕のことを好きだったなんて考えてもみなかった。だって君、店では明らかに僕のこと避けてたでしょう?」



(避けてたの知ってたの!?)



体をギクリと固くする朱殷を、恋は情熱的な光を灯した瞳をうっとりと細める。



そして無造作に掴みあげていた朱殷の体を逞しい腕で優しく包む。



「そっかぁ、君は僕のことがずっと好きだったから恥ずかしかったんだね?あぁ/////そうだったんだ…そうだと知ってあの頃の君を思い出すと…はぁ…/////もぅ…♡興奮する…♡」



妖艶に潤んだサンストーンの瞳でジッと見つめてくる恋に、朱殷はゾワリと布の繊維が乱れる様な気がした。



「ねぇ、朱殷さんはいつから僕のことが好きだったの?」



ガッチリと熱い腕に体をホールドされた状態でずいっと顔を近づけられ、朱殷は反射的に身を引いた。



そうしなければその熱い瞳に魂を吸い込まれてしまいそうだと思った。



しかし反射的に避けてしまってから朱殷はまたやってしまったと冷や汗をかいた。



(あからさまに避けてしまった…!でもさっきのは本能的なアレで…!)



「ん…むむぅ…」



たっぷりと綿の詰まった体をキュッと小さくして萎縮する朱殷に、恋は一瞬だけ悲しく微笑んだ。



「そうだ、君はまだ完成してないんだ」



恋となんとか目が合わないよう、一頭身の首をぐにっと折り曲げて俯いていた朱殷は、恋の聞いた事のない響の声にふと顔を上げた。



(今なんか言った?)



「ふふふっ、そんなに恥ずかしがらないで?大丈夫、君より僕の方が君のことが好きなんだから。ね?君はただ、僕のそばに居て、僕に愛されてれば良い。君はもう、戻れないんだから」



そう言って恋は愛おしげに朱殷の丸い背中を撫でながら、とても悲しく微笑んだ。

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