第8話
「はぁ…朱殷さん…♡」
顔を紅潮させ、息を荒くしながら、褐色の肌によく映える白のワイシャツを全開にし、自分の手で自ら胸を抉りはじめた恋に、
流石の朱殷も目を剥いた。
「ああ!血ぃ!血が出てる!」
慌てる朱殷をよそに、恋は相変わらず興奮しきった表情で朱殷の前足を握り、自分の胸から滴る血に触れさせる。
「おいっ!よせ!」
恋が何をしようとしているのか察した牡丹は、すぐに止めに入ろうとしたが、間に合う訳もなく、朱殷の白い前足は、恋の血に触れてじわりと赤く染まってしまった。
「あっちぃ〜〜!!」
朱殷が恋の血に触れた瞬間、朱殷の体にビリビリと痺れる様な衝撃が走り、その次に強烈な熱さを感じて飛び上がった。
が、しかし飛び上がった朱殷を恋がそのまま逃がすはずがなく、朱殷の体はすぐに恋の腕に捕らえられる。
「朱殷さん、ほら見て?僕の中。熱いでしょう?ねぇ…触って?」
(こわいこわい!この人怖い!普通こんなことしたら死んじゃうよ!)
恋の胸から滴る甘い香りを放つ熱い血と、内側から覗く恋の熱く燃えるように鼓動する心臓を目の当たりにし、朱殷の視界は次第に激しく回転し始めた。
「む…むむぅ……」
あまりの刺激の強さに目を回してぐったりと体を仰け反らせ気を失った朱殷に、恋は悲しそうに息を吐いた。
そしてそっと朱殷をソファに寝かせると、まるで何事もなかったかのような飄々とした顔で牡丹に向き直った。
「この人はもう僕のものだ」
そう言って牡丹を見返す恋の瞳には、明らかに狂気の光が宿っていた。
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