第7話

しかし、そんな和やかなムードに水を差したのはもちろん牡丹だった。



「いい加減にしろっ!こっちは真剣な話をしに来てるんだ。まともに質問に答えないなら、その呪物を取り上げるぞ!」



牡丹のピリピリとした怒鳴り声に、朱殷は背中がザワついた。



「んむむ……」



あまりの恐怖に、朱殷は無意識に体をくねらせ、謎の鳴き声を出しながら自ら恋の熱い胸板へと顔を押し付けた。



ついさっきまでは暑苦しくて仕方がなかったのに、今はこうしていることで牡丹に対する恐怖が軽減される。



(こうしてれば平気だ…なんとなく分かるぞ)



防衛本能の一種なのか、朱殷は牡丹の言う"呪物"という言葉が自分を指していることを無意識に理解していた。



「恋、何故それを作った」



「!?〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡!!!!!」



牡丹は、自分に怯えて身を隠すように自ら恋の腕の中へと入っていく朱殷の姿を見て何かを確信し、恋へと再び問い掛けるが、



この時既に恋は朱殷の無意識の防衛行動により、先程とは違う意味で冷静さを欠いており、もはや牡丹の声など耳に入っていなかった。



「はぁ〜〜///ああぁぁ……♡君が!君が自ら僕を…!んん〜/////だめ…もう分からない…君が僕をこれ以上どうしたいのかも、僕にどうされたいのかも!好き…僕は君が好きだ。絶対に離さない!」



次の瞬間、朱殷は言葉通りギュッと抱きしめられ、再び地獄の鉄板焼きを体験する。



「ぅあ〜ちちち!!熱い!熱い!」


「熱い?僕の愛はこんなもんじゃないんだよ?」



恋の熱を帯びた情熱的な瞳に、切なげに歪められた眉、そしてその熱い吐息、妙に汗ばむ美しい首筋。



恋の醸し出す全てが独特の妖艶な色気を放ち、その色気は全て朱殷を誘惑する為だけに放たれているものだったが、



当の本人に全く効果はなかった。



(なん…だと!?これ以上があるなんてごめんだ!死んでしまう!)


「む…むむ……」


「ねぇ、触ってみる?僕の胸の中…そうしたら僕が君をどれだけ愛しているのか君も分かるかも。いいや、分からなくても良い…僕は君に…君に触れて欲しいんだ…ねぇ…朱殷さん…♡」

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