第6話

「お前が一番よく分かってるだろ」



男は、恋と同じ褐色の肌に燃えるような赤い髪を鬱陶しげに掻き上げ、サンストーンの瞳で鋭く恋を睨み付けた。



「牡丹が僕に干渉してくるなんて日常茶飯事過ぎて、逆になんのことを言ってるのか分からないよ」



牡丹と呼ばれた男は恋の飄々とした態度に不愉快そうに眉を寄せる。



(牡丹さん!?)



突然現れた男が牡丹だと分かり、朱殷は押さえつけられた体で無理矢理振り返ろうと顔を動かそうとすると、



恋がすかさず朱殷の顔を押さえ、強引に自分の方へと向けさせた。



ぶにっと顔を押さえつけられ、無理矢理恋と視線を合わされる朱殷。



「うぅ…?」


「今、牡丹を見ようとしたの?」



熱く、大きな手で顔を固定された朱殷が見た恋の瞳は、まるで炎でも宿しているかの様に赤く、激しく揺れていた。



「え、あ…いや…その…」


「君は僕だけ見てれば良い!他の誰かなんて、もうその目に映さないで!」



(なっ、なんで急に怒ってるんだ…)



強い怒気を孕んだ恋の声に、朱殷が一瞬震えると、恋はすぐにハッと我に帰り、今度は今にも泣き出しそうな顔で朱殷の頬に頬ずりをしてきた。



「ごめんなさい…!君に声を上げるなんて僕はなんて幼いんだ…。もう二度としないから…僕を許してくれる?」



恋の縋るような瞳で見つめられ、朱殷は「大丈夫です」と言って短い前足でぽふっと恋の頬を撫でる。



そして朱殷に頬を撫でられた恋は、まるで子供の様に無邪気に微笑むと、朱殷の口元に自分の唇を押し当てた。



「むむ!?」


「ふふ、これで仲直りだね♡」


突然の出来事に、朱殷は一瞬息が止まったが、頬を赤らめ、無邪気に微笑む恋の顔を見て(まぁいいか)と頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る