第46話

しかし彼の声を聞いたジルは更にカラカラと枯れた声で笑う。



「オリヴィエ…僕にとって君は大切な友人だ、君にとって僕がそうでなくても、僕はずっと君を親友だと思ってる」



「当たり前だ、俺にとってもお前は親友だ!今もこれからも!」



オリヴィエはジルがなぜ今更こんなことを言うのか分からなかった。



確かにジルとは一悶着あったが、だからと言って今までの交友を無かったことにしたつもりは一切無かった。



ジルに向かって必死に叫ぶオリヴィエに、ジルは何故だか切ないような、悲しいような微笑みを浮かべ「ありがとう」と頷く。



(なんでそんな顔するんだ…)



「なぁジル、俺はお前に何をして何を言ったんだ?教えてくれ」



「…………………………」



オリヴィエの言葉にジルは沈黙した。



そして涙を流しながら「僕も君に酷いことを言ってしまった、君が僕になんと言おうと関係ない、僕が悪かったんだ…」と血まみれの手でオリヴィエの服の裾を強く掴んだ。



「お前だけが悪いなんてことはない!」



「いいや…僕は君が、君があの少女に心奪われていることが許せなかった…あんな化け物に心身共に自らを捧げるなんて間違ってる、そう思っていたんだ」



「ジル…」



「僕は君に目を覚まして欲しかった、君が心を寄せるべき存在は絶対に他にいる筈だと思っていたから。温かな君を、あんな冷淡にしてしまうようなアイツはやはり君に相応しくないと思ったんだ…。僕は…君に、僕がこうあって欲しいと思う理想を押し付けてしまっていた…」



「…………」



「オリヴィエ…あの時僕は化け物を養護する君もまた化け物だと言ったけど、本当の化け物は僕の方だったんだ……」



(あの時…?)



「?ジル?それはなんの話だ?」



「はぁ…君は許してはくれないと思うけど…、どうか最後に僕の願いを聞いて欲しい…」



「最後?なんで勝手に最後にするんだジル!」



「お願い…聞いて…はぁ…、今すぐ彼女を連れてここから逃げるんだ」



「逃げる!?なぜ!?」



「彼女を殺しに追っ手が来る」



「!?」

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