第44話
『私、脅されたの。貴方の代わりに自分をって。もちろん断ったわ、でもそしたらあの人、断るなら今すぐにでも私を村へ引き摺り出して、この胸に杭を打ってやるって言うのよ!』
「そんなこと無視して追い出せば良かったじゃないか!」
『そんなこと出来ないわよ!私がコントロールするには、その人間の血を吸わなきゃいけないの!大抵の人間は私の目を見た瞬間、言うことをきくようになるけど、あの人間は違ったの!いくら私が化け物だからって、3日も食事をしていない状態じゃ眷属も使えないわ!なのに貴方くらいの体格の大の男を相手に勝てると思うの!?不可能だわ!だから私は彼を噛んで、村へ帰らせたのよ!』
「3日!?どういうことだ…?」
『言葉通りよ、貴方は3日間ここへ来なかった。ここへ来た人間も貴方が行方不明になったと言って探していたの。私は帰らせた言ったけど、彼は私が貴方を殺した、復讐してやる、と躍起になっていたわ』
「3日…?行方不明?俺が?…俺は確かに家に…」
混乱するオリヴィエに、少女はわざわざ闇の中に姿を隠しながら声だけを響かせた。
『ねぇ、オリヴィエ?』
「?」
姿の見えない少女の声に、オリヴィエが辺りを見渡すと、次の瞬間、ヌッと目の前に少女の姿が浮き上がってきた。
「!?」
改めて目の前にした少女の顔は、これまでに無いくらい無感情で、まるで精巧に作られた人形の様だった。
間近で見る少女の赤い瞳はいつにも増して美しく、その美しさにオリヴィエは強制的に自分の内側に深く深く根付いていたはずの自我さえも根こそぎ奪われていくのを感じた。
オリヴィエの少女を見つめる黒い瞳からスゥーっと熱い光が消えるのを見届けた少女は、空っぽになったオリヴィエをそっと抱きしめ、静かに微笑んだ。
『ねぇ、オリヴィエ?私の為に貴方のお友達を連れて来て?』
「……………わかった」
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