第43話
"全て壊された"
オリヴィエはまさにこの時、ジルが自分の幸せを奪う悪魔のように見えた。
(そうだ、今コイツ、"化け物"と言った!あんなに化け物の存在を否定していたはずなのに、コイツは認めたんだ…!)
そう思った時、オリヴィエは唐突に"エクソシストを呼ぶ"という過去の自分の言葉を思い出した。
(彼女が殺される!)
0.001秒でこの結論に辿り着いたオリヴィエは、気が付いたら目の前のジルを押し退けて走り出していた。
「オリヴィエ!どこに行くんだ!」
後ろから聞こえるジルの声など、もはや風を切る音でオリヴィエには聞こえていなかった。
彼の頭にあったのは、あの教会にいる孤独な化け物のことだけ。
息を切らしながらも森を駆け抜け、辿り着いた教会内には、分厚く大きな本を膝に乗せて読んでいる少女がいた。
『あら、オリヴィエ来てくれたのね』
ニッコリと微笑む少女を見た瞬間、ここまでオリヴィエを駆り立ててきた怒りや焦り、そして憎悪にも近い嫉妬がスゥーっと薄れていくのが彼自身にも分かった。
「ここに…ここに誰か来た?」
オリヴィエは息を整えながらゆっくりと少女へと歩み寄っていく。
『そうね、来たわ』
「!やっぱり…!そいつをどうしたの?」
『どうって…少し話をして、血を貰ったわ』
「!?君は!俺と約束したはずだ!俺以外を襲うなって!」
『ええ、それは覚えてるわ。だけど私だって好きで貴方との約束を破ったんじゃないわ』
「嘘だ!じゃあなんで!」
感情的になるオリヴィエに、少女は冷めた目で彼を一瞥し、視線を本に戻しながら言った。
『私、脅されたの』
「なんだって?」
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