四章

第40話

「オリヴィエ!オリヴィエ!」



「…………?」



激しく体を揺さぶられて目を覚ましたオリヴィエは、自宅のリビングで倒れていた。



「オリヴィエ!僕が誰だか分かるかい!?」



「……………ジル…?」



「ああ!そうだよ!良かった、本当に良かった!」



ぼんやりとした視界に朧気に映ったジルは、歓喜の声を上げると、オリヴィエの体を起こし、抱きしめた。



「なんでここに…」



何故、自分の家にジルが居るのか状況が飲み込めないオリヴィエは、ジルの興奮気味な声に眉を寄せつつ、掠れた声で問いかけた。



するとジルは一旦オリヴィエから体を離し、「話は診察をしてからだ」と言ってソファーに置いてあった鞄の中から聴診器を取り出し、耳につけた。



そして次に脈を計り、ながらまじまじとオリヴィエの顔色を観察する。



「…一体なんのまねだ?」



「オリヴィエ、君はここのところまともな食事をとっていないだろう?」



「……………」



「なぜだい?」



「…気が向かないだけだ、ほっといてくれ」



「オリヴィエ、君は今、僕が放っておけるほど正常な顔色をしていない。脈だって弱いし、目だってさっきから焦点が合ってないじゃないか」



「…だからなんだ、お前には関係ないだろう。出ていけ」



「出て行かない」



「出て行け!」



オリヴィエは激しい頭痛に額を押さえながら怒鳴った。



しかし、そんな彼を見たジルは、何かを察したような、納得したような表情をして一度目を伏せると、次に驚くべき発言をした。



「君がそうまでして頑ななのは、やはりあの化け物に操られているからなのかい?」

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