第38話

「いって〜…いきなりなにすんの…?そんなにお腹空いてた?」



予想より多くの血を吸われたオリヴィエは、貧血の症状が酷かった為、再び床に横になっていた。



『……貴方が私を脅すからよ、これで分かったわ。貴方はそうしてるのが一番ね』



「脅す?俺が?いつ脅した?」



『私を外へ連れ去るつもりだったのでしょう?』



「ああ…違うよ、そういう意味じゃなくて。君と一緒に居たいから、家に連れ帰れたら良いのにって意味だったんだ」



『?私を連れ帰ってどうする気なの?』



「え?いや…別にどうするもないけど…。ただ一緒に過ごしたいってだけで…」



『でも私は夜しか起きていられないわ。朝が来たら眠ってしまうし、陽の光を浴びるとこの体は朽ちてしまうの。それに人間がたくさんいる場所に身を置くのは危険だわ』



「それは分かってるよ、だから残念だと思ったんだ」



オリヴィエの返答に、少女は小さく首を傾げる。



どうやら少女は、オリヴィエはあくまでも自分のかけた暗示と、魅了の能力によって自分に惹かれているのだと思っているようだった。



(俺は彼女にとってやっぱり一時的な食事に過ぎないのか…)



オリヴィエは小首を傾げる少女を見て、悲哀に目を細めた。



そもそも彼女の中に誰かを想う心などないのかもしれない。



敵か、獲物か、



きっと彼女はこの2つのカテゴリーでしか人間をみていない。



それはそうかもしれない。



獲物である人間は、少女からしたら通り過ぎて行く存在だ。



こうして自分と他愛のない話をしているのも、感覚的には人間が家畜の世話をしながら体を撫でたり、気まぐれに声をかけたりするようなものなのかもしれないとオリヴィエは思った。

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