第37話
ロウソクの火が全て消え、震えていた少女の体が少しずつ落ち着いていくのをオリヴィエは片腕で少女の体を自分の胸に押し付けながら確かめていた。
「火が怖いの?」
『……………』
「なのに何故ロウソクを?」
『……人間は灯りがないと警戒するでしょう?』
「俺はしないよ」
『分からないじゃない、さっきだって貴方、私の命令を聞かなかったし、もう暗示が解けてるのかも。きっと正気に戻ったら私のことなんかすぐに殺してしまうわ』
「オリヴィエ」
『え?』
「俺の名前」
『……それはさっき聞いたわ』
「呼んで」
『名前を呼ぶことがそんなに重要なことかしら?』
「いいから。そしたら君の命令をなんでもきく」
『ほんとうに?』
「うん」
『オリヴィエ』
「うん」
『オリヴィエ』
「なに?」
少女は自分が名前を呼ぶごとにキツく抱きしめてくるオリヴィエに困惑し、急所である心臓を守るように胸の前で両腕を交差させた。
『オリヴィエ離して。私をこのまま外へ連れ去る気なの?』
不安そうに瞳を揺らし、上目遣いでこちらを見上げてくる少女に、オリヴィエの心臓は一際大きく跳ね上がった。
「はぁ〜〜〜〜…それが出来たらとっくにそうしてるのに…」
深いため息をつき、少女のふんわりとした髪に顔を寄せるオリヴィエに、少女はビクリと体を震わせると、するりとオリヴィエの腕から抜け出し、一度闇の中へと逃げ込んだ後、後ろからオリヴィエの首筋に深く噛み付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます