第33話

次にオリヴィエが目を覚ますと、そこは例の教会だった。



闇の中でゆらゆらと複数のロウソクが灯り、氷の様な冷たい手がオリヴィエの額を優しく撫でていた。



『目が覚めた?』



「…………君は…」



目を開けたオリヴィエの視界に飛び込んできたのは、昨夜出会った少女だった。



少女の顔を見た瞬間、オリヴィエは昼間はすっかり忘れていたこの少女のことと、ここでなにが起こったのかを全て思い出した。



「………俺は、君のことをついさっきまで忘れていたよ…」



少女の膝に頭をのせ、体を横たわらせた状態で、オリヴィエは下から少女の赤い瞳を見つめた。



『ふふ、忘れるように私がしたんだもの、当たり前だわ。気分はどう?食事はしっかりとったのかしら?』



「……いや…想像以上に気分が悪くて…とても食事どころじゃなかったよ」



ため息混じりに言うオリヴィエを少女は笑顔で見つめ返す。



『だから言ったじゃない、一気に私に血を与えたら、貴方の方が辛くなるって』



「だけど…そうしないと君は他の人間も呼び寄せるだろう?」



『あら、当たり前だわ。だって到底一人の人間だけじゃ足りないもの。それに一気に大量の血を貰ったらすぐに死んでしまうし。私は外の世界と接点がないから、獲物に次の獲物を連れて来て貰うしかないのだから、すぐに殺してしまいたくないの』



少女の言葉を聞いて、オリヴィエはセリーヌの使用人が目撃した光景の経緯を理解した。

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