第30話
ジルの姿を見た瞬間、それまで治まりかけていた頭痛が再び襲ってきたのを感じ、オリヴィエは思わず顔をしかめた。
「すぐに戻るから皆静かにね」
オリヴィエはそう言い残し、一旦教室を出て、外にいるジルへと駆け寄った。
「……何しに来た、生徒の保護者にでも頼まれたか?」
「いや、君の体調が悪そうだとミレーユさんから聞いたから…」
ジルは気まずそうに俯きながら、チラチラとオリヴィエの顔色を伺っている。
ミレーユというのは駄菓子屋の老婆だ、きっとオリヴィエの様子がおかしいことに気が付いて、ジルの所まで言ったのだろう。
オリヴィエは、そんな老婆の気遣いすら面倒で、煩わしく思えた。
(余計なことを…)
「今はもうどうってことない、帰ってくれ。俺は子供達を見なければならない。必要になったら自分で君の所に行く、じゃあな」
「あ、オリヴィエ!」
オリヴィエは、背後に響くジルの声を無視し、スタスタと教室へと入っていく。
一人取り残されたジルは、穏やかな春風に吹かれながら、教室内で生徒達へ微笑みかけるオリヴィエを外からしばらく眺めた後、とうとう諦めて去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます