第11話

「そうか…それで、彼は夜中に家を抜け出してなにを?それもわざわざ窓から抜け出すなんて」



「それもそうだろう?もう子供じゃないんだ、堂々と玄関から出たって誰も咎めやしない。だからセリーヌは、使用人を叩き起してエリックの後をつけさせたらしい」



「なるほど」



確かに夜中に年頃の女性が一人で家を抜け出すのは得策ではない。



この地域ではたとえ恋人同士であっても、婚前交渉を禁止する風習があった。



体は生涯を共にする唯一の伴侶にだけ開き、それまでは誰にも許してはいけないという、尊き神の教え。



故に、結婚前の女性の行動は実に厳しく注目されてしまうのだ。



実際のところは誤解であっても、一度不貞行為を疑われてしまった女性は、もはやこの地域で結婚相手を探すのは不可能になってしまう。



ジルがセリーヌを帰すよう、オリヴィエを諭したのもこの様なことを加味してのことだった。

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