第10話

「化け物が…なんだって?」



驚いた様に薄い茶色の瞳を見開いたジルに、オリヴィエは真剣な表情で話し出す。



「エリック…アイツは明るい奴だった。少し惚れっぽくて、すぐ振られて落ち込むことはあっても、見舞いに来た俺達に顔も見せず追い返したことなんて一度もなかった」



ジルはエリックとの繋がりがなかった為、オリヴィエはエリックの人柄から話を始めた。



オリヴィエの話にジルはゆっくりと椅子に腰を下ろすと、その薄い茶色の瞳に悲哀の色を浮かべながら、オリヴィエを見つめ、静かに頷いた。



「……それから俺は結局今日の葬式までエリックに会うことすら出来なかったんだが、さっきの彼女…エリックの妹のセリーヌが、一週間ほど前に夜中にエリックが窓から部屋を抜け出すところを目撃したらしいんだ」



「なるほど」



「だけどセリーヌが言うにはその時点でエリックの体はやせ細り、顔も死人のように青白くなっていたそうだ」



「というと、彼は元々血色の良い男だったのかい?」



「ああ、エリックは体格も良くて…ほんとに…頼もしい、良い奴だったよ…」



「そうか…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る