第3話

「どういうことだ?なんで誰も知らない?」



オリヴィエの困惑する声に、集まった友人達もまた、困惑の表情を浮かべた。



「おかしい…あのエリックが誰にも意中の相手の話をしていないなんて…」



「確かに…じ、じゃあ、エリックは病か?」



「い、いや、この間俺は妹のセリーヌに会ったが、エリックは別に体調が悪い訳ではないそうだ」



「じゃあ一体どうしたっていうんだ?セリーヌはなんて?」



オリヴィエの切り返しに、エリックの妹セリーヌと会ったというニコラは申し訳なさそうに首を横に振った。



「それが…セリーヌもろくに顔を見ていないそうなんだ」



「じゃあなぜ彼が病でないと分かる?」



「本人がそう言うそうだ。セリーヌが食事を部屋の中へと運ぼうとする度に、執拗に扉の前に置いて行けと言うそうだ」



「それで?」



まるで尋問のように迫ってくるオリヴィエに、ニコラは少し気圧されながらも小さく頷きながら続ける。



「それで、セリーヌはエリックの言う通り食事を扉の前に置いて、立ち去る前に何故部屋から出てこないのか、具合でも悪いのかと聞いたそうなんだが、彼は一言「僕は正常だ」と…「お前がそこに居続ける限り食事がとれないから消えろ」と彼女に言ったそうだ」



「あのエリックが?」



「ああ…それは俺も思った。だが、そのエリックの声は普段と変わらず明るい声だったそうだ」



「なるほど、だからセリーヌはエリックは病でないと?」



オリヴィエが納得した様に頷きながら顎を手でさすると、ニコラはやっと尋問が終わった囚人の様にホッ肩で息をついた。

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