二章

第14話

「あっ…、お、おかえりなさい〜…」


男は目をつぶった柚の顔を覗き込みながら、柚の様子を観察するように、色々な方向から大袈裟に手を振ったりしだした。


(え!?もしかしてこの人、俺に声掛けてきてる!?)


柚は男の弱々しい声を聞き、驚きつつもかなり薄ーく目を開け、男の様子を伺った。



「あっはは…なんちゃって〜…、昨日は目が合ったと思ったのになぁ…はは…ある訳ないかぁ…」



男は青い顔を更にどんよりとさせ、ガックリと肩を落とすと、小さなテーブルの前にちょこんと正座をし、しくしくと泣き始めた。



「ああ…僕は一生立派な神様にはなれないんだ…うぅぅぅ…このまま誰にも出会えず、本当に悪霊にでもなってしまったらどうしよう…うぅぅぅ…」



(………泣いてる…)



「うぅぅぅ…うぅぅぅ…僕なんて…僕なんて…」


男はひとしきりテーブルの前で泣いた後、よろよろと立ち上がり、とぼとぼと何処かへ消えてしまった。


(き、消えた…?)


懸命に寝たフリをしていた柚は、男の冷たい気配が消えた後もしばらく緊張してなかなか寝付けなかったが、外が明るくなってきた頃になってようやく眠りについた。

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