第4話

「な、のになんで!?」




引越し翌日、柚は軽音サークルの部室でマイクスタンドを抱きながら叫んでいた。



「なに、今度は何に荒れてるわけ?」

「なんか引っ越した部屋が事故物件だったって」

「マジかよww柚、お前は天才だなっ!!」



サークルメンバーに尽くあざ笑われ、柚はぷぅっと頬を膨らませた。




「皆ひでぇよ!!俺は実家出るのにも苦労したってのにっ!!よりによって引越し先に幽霊が出るなんて…少しは気の毒に思わないのかよ!」



ギャンギャンと叫ぶ柚に、メンバーはそれぞれ楽器の手入れをしながら「はいはい」と適当にあしらう。



「どうせお前、無駄にケチって破格のとこ借りたんだろ?」



メンバーの一人が冗談交じりにそう言うと、柚は「うっ…」と言葉を詰まらせた。



「って、マジなのかよ…」

「馬鹿だなぁ…そんなん、怪しいに決まってんだろ…」



自分の反応によって室内は笑いから一転して呆れとため息が漏れた。



「え、いや…だって…俺……。不動産のお姉さんはなんにも言ってなかったし…分かんないし…」



だんだんと沈んでいく柚の表情に、メンバーもとうとう慰めざる負えなくなってきた。




「まぁまぁ、そんなにその部屋が嫌ならしばらく俺のとこに泊まるか?」



そう声を掛けたのはベースを抱えた尚也だった。



「嫌だ」

「はっ?なんでだよ?」

「尚也、絶対俺に彼女自慢したいだけだ」

「はぁ…じゃあどうすんの?」

「………橙真んとこ泊まる…」



ぷぅっと頬を膨らませ、マイクスタンドに抱きついた状態で床で拗ねる柚の姿は完全に幼稚園児だ。

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