第5話
(そうだ形なんてどうでも良かった、私があの頃欲しかったのは誕生日プレゼントでも、クリスマスケーキでもなく、母が自分を見てくれているという実感だったんだ。子供の頃は"物"を通して母の気持ちを試していたのかもしれない)
「お願いだあー!だれか!だれか助けてぇ!」
暗い夜道を短い足で走りながら朱殷は叫んだ。
本当に、本当の神が存在するとしたなら、この叫びを聞いて欲しい。
どうか、無力なこのぬいぐるみに、救いを施して欲しい。
支払える対価も無く、神の為の祈りの言葉さえ持たないが、そんな自分の元へと手を差し伸べてくれる存在こそが本当の"慈愛"を持った尊い存在だと朱殷は思った。
しかし、朱殷の叫びに応える存在などなく、走り続ける朱殷の白い足はどんどんと黒く汚れていくだけだった。
(やっぱり期待なんてするもんじゃないな…)
朱殷の心にそう重い落胆という感情がのしかかってきた時だった。
キラキラと温かな星の煌めきが目の前を通り、次第に20代前半くらいの青年の姿を作り出した。
その青年は、白んだ月の光を浴びて肩甲骨ほどまでのびたラピスラズリの輝く髪を緩く一つに束ね、まさにサンタクロースの様な格好をして、透き通った金色の瞳を大きく見開いて朱殷を見つめていた。
「お前こんな所でなにしてんだよ?」
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