第3話

通話を切った父親は暗い表情で娘を振り返り、その表情を見て娘は全てを察して朱殷のお尻を床に引きずりながらバタバタと2階へと走り去ってしまった。



「……出てくる…」



「気を付けてね…」



父親の低い声に、母親はそっと肩に触れた後、途中まで切り分けていたケーキを冷蔵庫へと戻した。





車のエンジン音が聞こえ、ベッドで朱殷の丸い背中に涙を流しながら顔を埋めていた桃はパッとカーテンを開け、外を覗いた。




父親が運転した車を見送った桃は、更にギュッと朱殷を抱きしめ「嘘つき…」と大粒の涙を流していた。



体の布を強く引っ張られながら強引にベッドへと引き込まれた朱殷は、それからしばらく少女の悲しい泣き声を聞いていた。



桃の大粒の涙と大量の鼻水をお腹に擦り付けられながらも、朱殷は桃が眠るのをジッと待った。



そして桃が泣き疲れて眠ったのを確認すると、そっとベッドから抜け出して、窓から家の外へと脱出した。

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