第2話
「かわいい〜!パパありがとう!一緒にご飯食べても良い?」
「ああ、良いよ。皆で食べよう」
(ヤバいヤバいヤバいヤバい!このままだと一生普通のぬいぐるみのフリを強いられる生活になってしまう…!)
幼い腕には収まりきらないほどのたっぷりと綿の詰まった体が一ミリたりとも動かないよう必死に堪えながら危機感を募らせる朱殷の一方で、家族は温かい笑顔を浮かべていた。
そうして家族団欒は進み、豪華なクリスマス料理が次々と片付けられ、遂に朱殷と共にこの家へと運ばれてきたケーキが幼女の母親の手によって運ばれてきたきた時、どこからかスマホの着信音が鳴った。
その音を聞いた瞬間、一家全員の顔から笑顔が消え、母親のケーキを切り分けていた手も止まってしまった。
娘のコップにジュースを注いでいた父親は、着信を無視しようとしたようだが、一向に途切れることのない着信音に仕方なく席を立ち、ビジネスバッグからスマホを取り出す。
「……なんだ」
低い声でスマホに向かって話す父親を、娘は朱殷をギュッと抱きしめながら見つめている。
「パパ…」
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