☆朱殷の怒涛のクリスマス☆

椿

第1話

12月25日。



大切な人と過ごす特別な一日。


街はクリスマス一色、どこの店へと入ってもクリスマスソングが流れ、大人達は子供の願いを叶える為、予約していたデコレーションケーキを携え、足速に家路へとつく。



そんな日に朱殷は、気が付けば見知らぬ車の中で、甘い香りの放つケーキの箱と共に揺られていた。



(ここどこだ…)



明らかに恋の車ではない車内を見渡す。



車内にはチャイルドシートがあり、頭上には幼児をあやす為のおもちゃがぶら下がっている。



「ああ、今向かってる。大丈夫だ、急ぎの仕事も片付けてきた。今日は一緒に過ごせるよ」



運転席から聞こえてきた男性の声に、朱殷が顔を向けると、運転席にはカッチリとしたスーツに身を包んだ中年の男性が片耳にイヤホンを付けて話ていた。



(これって…もしかして…?)



朱殷が嫌な予感で震えていると、ある家の前で車が止まり、男性によって朱殷はケーキと共に家の中へと運ばれてしまう。



「ただいま」



男性がドアを開けると、すぐにリビングから小さな女の子が飛び出してきた。



「パパ!おかえりなさい!お仕事はもう終わったの?」



「終わったよ、今日は一緒にケーキを食べよう」



「パパと一緒!?やったー!ねぇパパ、その大きな白いのはなに?」



前後逆に抱えられた朱殷は、幼女の声に内心ギクリとした。



「これはパパから桃へのプレゼントだよ。昨年は一緒に居られなかったからね」



「ほんと!?やったあー!」




(いいぃぃ!?やっぱり!プレゼントにされてるぅ!)



そうして男性が朱殷の顔の方を前へと持ち直し、幼女へと渡すと、幼女は「おっきいニャンニャンだあ!」と飛び付くように朱殷のふっくらとしたお腹へと抱きついた。

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