第24話

『僕に月なんて無いと思ってた』



「つき、ですか…?」



『うん…』



白川は押し倒したかすみに覆いかぶさった状態で、聞き返してくるかすみの瞼をそっと指で撫でると、再びかすみの首筋へと顔を埋める。



『僕は生まれた時からずっと誰かの夢や記憶の中に居たんだ。なぜならそれが僕の役目であり、特性だから。そのことに対して僕は別に悲観も疑問も持っていなかったけど…あの日、あの人に言われて気付いたんだ』



(あの人?)



かすみは白川の独言の様に呟く声を聞きながら、浮かんだ疑問は口に出さず飲み込んだ。



『僕は、誰の夢の中にも入れるけど、逆に誰の夢の中にも居続けられないんだ。僕はその人の望む悪夢や記憶を食べ終わったらすぐに追い出されてしまう』



白川はそう言って唇でスっとかすみの首筋をなぞり、かすみの耳の後ろにそっと唇を押し付ける。



「んっ…、」



かすみは予想していなかった刺激に眉をひそめ、思わず漏れた自分の吐息に顔を赤くした。



そのかすみの反応を白川は暗い瞳を満足気に細めて眺め、かすみの耳元で『かわいい』と囁く。



「ち、ちがっ!/////」



恥ずかしさのあまり瞬時にガバッと起き上がろうとしたかすみの体を、白川は今度こそ逃がすまいと自分の体重をかすみへとかけ、肩を掴む。



『だけど君だけは僕を追い出さなかった、何度も何度も僕を夢の中に入れてくれた。君には僕に食べて欲しい記憶も悪夢も無いはずなのに』



「そんな…し、知りません!私の意思じゃ…」



かすみが必死に否定しようと首を振るも、物凄い力でかすみの両頬を押さえ、再びかすみの唇に噛み付くようなキスをした。

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