第15話

「はぁ〜〜疲れたぁ〜〜」



仕事を終えたかすみは、コンビニ袋をたずさえ、夜道を一人で歩いていた。



今話題の満月への問い合わせで電話わ鳴り止まず、スケジュール管理を担っている満月のもう一人のマネージャー、暗緑に電話越しで怒鳴られながら調整に追われた一日だった。



(暗緑さんて…見た目は可愛いんだけど、性格がキツイんだよなぁ…)



そう、溜息をついた時、ゾワリと寒気がしたかと思うと、いつの間にか、かすみの隣を秀が何食わぬ顔で歩いていた。



「うわっ、びっくりした」



「ブスがこんな時間に何してんだよ?」



「おい、仮にも同居人に向かってその呼び方はないでしょうが…!」



「事実だろ」


「ムカつく」



(からかい方が完全に小学生なんだけど、それにムカついちゃう自分の幼さすら情けない…)



かすみはムッとしながらも、ふと秀の服から漂ってきた黒百合と同じ匂いに、一瞬で顔が赤くなった。



「それ…」


「あ?」


「どこの香水…?」


「香水…?そんなの俺は付けな…ちっ」



かすみの問に、秀は不愉快そうに顔をしかめ、一瞬その目を赤く光らせ、舌打ちをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る