第8話
「〜〜〜!じゃあ、もう飲ませねーぞ!出てけ!」
大きな声を出すかすみに、秀は「元気じゃねーか」と小さく微笑む。
「ええ!元気ですとも!不味い血でも元気に生きていますとも!」
「だから俺はお前を殺すまでここから出ていかない」
「は?殺すって…」
秀の突然の発言に顔を青くするかすみを無視し、秀は怪しくも、どこか柔らかい笑みを浮かべて続ける。
「お前の血が不味いのは、俺にとって好都合だ。最近は餌に警戒されない為にかな労力を割いてたからな。俺が人間じゃないことを知った上で逃げようとも殺そうともしないお前は、俺にとって最良の餌だ。安定して食事ができる分、無理をしなくて良いのは助かる」
「え、餌…」
「それもと今すぐ俺を殺すか?」
「どうやって…」
「そんなの簡単だ、俺の心臓を潰せば良い。それか今すぐこのカーテンを開けて、陽に晒してしまえば俺は死ぬ。どうする?」
(……こいつ、最初から私が出来ないって分かってて言ってるな…)
「私は…貴方を殺したりしません、だから貴方も私を殺さないでください…」
かすみの弱々しい声に、秀は瞳を赤く光らせて暗く微笑んだ。
「なんだそれ、お前そんなんで俺が本当に諦めるとでも思ってんのか?俺になんのメリットもない」
「分かりました!なら私より美味しい餌があらわれるまで、私が餌役を引き受けます。でも、新しい餌が見つかったら私を生きたまま解放してください」
「……お前本気で言ってんのか?」
「も、もちろんです…」
「俺達吸血鬼が獲物を殺すのは、他の獲物に存在を気付かれないようにする為だ。存在を気付かれれば、獲物は狩人と化す。俺達は狙う側から狙われる側へと一変してしまう。お前を生かしておくというのは、俺にとってリスクでしかないんだ」
「え、でも私が黙ってれば良いってことではないのですか…どうせ吸血鬼とか信じてくれる人なんて居ないだろうし…」
青い顔で秀を見上げるかすみに、先程まで深刻そうに語っていた秀だったが、「まっ、言われてみればそうか」と意外とあっさり承諾した。
「口約束は信用しない、お前には俺の歯型がついついるし、お前が約束を破ればすぐに分かる。……その時は殺しに来るだけだ」
赤く瞳を光らせる秀に、かすみは酷い寒気で震える唇で「のぞむところです…」と小さく頷いた。
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