第7話

翌日、目を覚ましたかすみは、酷い貧血症状により、会社を休むはめになってしまった。



(だ、怠い…)



ぐったりとベッドに横たわるかすみを見下ろす秀が、赤い目を光らせながらこちらに向かって何かを呟いている。



しかし、かすみには何を言っているのか全く聞き取れず、とりあえず「怪我は…大丈夫なん、ですか?」と声をかけた。



すると秀は赤く光らせていた目を、普通の黒い瞳へと戻し、少し驚いた表情を見せた。



「暗示が効かない…?」


「?あのぉ、怪我は大丈夫なんですか?」


かすみは繰り返し同じ質問をするが、秀には聞こえていないのか、返事をしてくれない。


そんな秀に煮えを切らしたかすみは、なんとか重い体を起こして、秀の服を掴む。



「あの、怪我!大丈夫?」


かすみの大きな声に、秀はハッとしたようにかすみの顔を見返すと、再び瞳を赤く光らせた。



「お前、昨日のこと覚えてるんだろ?俺が怖くないのか?」


「怖い…?はい、怖いと言えば怖いですよ。血だらけで倒れてたし、救急車呼ぶなとか言うからヤバい系の人なのかなぁとか……」


「………そっち?」


「は?」



顔色の悪いかすみを見下ろしながら、秀はなんだか力の抜ける気分だった。


「お前が今日そんなんなのは、俺が昨日お前の血を吸ったからだ。俺はお前を殺す気で血を吸ったが不味くて飲みきれなかった」



「不味っ!?失礼な…」


反論しようとするかすみの声を無視し、秀は続ける。


「だから今、お前の記憶を弄ろうとした。だけどお前に俺の暗示は効かなかった…、お前、一体なんだ?血も異常に不味いし。若い女の味じゃないぞ」



「〜〜〜〜!!」


不味い、不味い、と言われ続け、かすみもとうとう我慢の限界がきていた。

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