第4話

「んんん〜〜〜!!っだぁあ〜はぁっ!!」


「うっせぇーよ、しかもキモい」



かすみが息苦しさに目を覚ますと、こちらに向かって冷たい視線と声を掛けてくる人物がいた。



「あ、帰ってたんですね秀さん」



声のする方へとかすみが視線を向けると、そこには茶髪で派手な服装の男がカーテンの隙間から差し込める朝日から隠れるようにして暗いキッチンの奥から濁った赤い瞳を光らせて、こちらを見つめていた。



(……分かっていても暗がりであの目は怖いんだよなぁ…)



「いいからはやくこっち来いよ」


「はいはい」


かすみはゆっくりとベッドから起き上がり、秀のもとへと向かうと、その途端秀に肩を掴まれ、壁に押し付けられた。



「いった、だから逃げないですっ……てっ…!」



言い終わる前に首筋を強引に噛みつかれ、血管から直接血を吸い上げられる。



牙が肌に食い込む感覚よりも、この吸い上げられる感覚がかすみにとっては苦痛だった。



(早く終われ…)



固く目をつぶって浅い呼吸を繰り返していると、パッと秀が口を離し、顔を顰めていた。



(え、なにその顔…)



「ど、どうしました?」



不機嫌そうに顔を顰める秀の横顔を見ながらかすみが弱々しく声をかける。



(いや、てゆーかなんでこっちが気遣わなきゃいけないの…)



「不味い」


「はっ?」


秀はそれだけ言うと、かすみから体を離し、不機嫌そうにその赤い唇を拭いながらスタスタとクローゼットの方へと真っ直ぐに歩いていく。



かすみはその姿をしばらくぼーっと眺めていたが、ハッと我に帰ると、



「ちょっと!寝る前にシャワー浴びてからにしてくださいよ!香水の匂い、キツイですよ!」と秀の背中に叫ぶ。



しかしその声に振り返った秀は、ベッと舌を出し、そのままクローゼットの中へと入っていってしまった。

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